本当はファクトチェックまでできればいいのだとは思うのですが、そこまで労力割いている時間もないので、取り急ぎ「ここちょっとおかしくない?」と釘だけは刺して、気になる方は調べてくれたらいいなと希望…という作業をすることにしました。
(1時間半でできるかなぁ…)
選挙のたびに、こうして各党マニフェストからの抜粋をしてくださる、こちらを参照しつつ進めます(そもそも、この「抜粋列記」だけで拡散したら、今回はまずくないか…嫌なドキドキが止まらなくなったのです……毎回、この労を取ってくださってることには感謝しており、こんな心配をしないといけない状況が本当に嫌……)
こちらで抜粋してくださっているものから、問題があると私が思った個所をさらに抜粋引用(【 】内)します。元文はこちらでご確認ください。こちらには、マニフェストからの抜粋だけではなく、最後に関連する動画(党首討論など)のリンクもあります。note.com
自由民主党
まず【「違法外国人ゼロ」に向けた取組み】は何も今に始まったことではなく、ずっとその姿勢で、入管法も改悪したし、排除的な対応はすでに強化されているのにこれ以上何厳しく管理???です。こちらの声明が端的に批判しているので、こちらを読んでください…
さらに、これは自民党だけではないのですが、
【近年、指摘されている外国人による運転免許切替手続きや不動産所有などの諸問題について】という書きぶりが卑怯。「指摘されている」とは、誰がいつ、どの状況を指して、どんな根拠を示して「指摘」したのかを明記しないことで、さも「まっとうな指摘≒そういう問題が看過できないレベルで多発している」と錯誤させマイナスの印象を与える恐れがあると思うのです(そして差別を強化する)。
運転免許切り替えの問題も不動産所有の問題も、最近になって急に報道が増えた&言及するメディアが増えたように思いますが、たまたま事故やトラブルで問題が顕在化したことを「指摘されている」と政策の根拠にするのではなく、それがどう問題なのかを調査分析する方が先ではないでしょうか。具体的客観的な根拠を明示しないまま、ただ文言として「・・・という問題があり」のように書いたもん勝ち?みたいな表現が他党でも目につきました…(ちなみに、立件民主党、共産党、社民党以外はその話題に「乗っかって」います。「世間の声」を拾っているつもりなのかもしれないけれど、何でもかんでも拾えばいいというものではないでしょう…)
立憲民主党
マニフェストは穏当、真っ当。立憲主義に恥じない…というか、基本的に「法治主義」の筋が通っているのが(マニフェストまとめる方たちが)さすがです。
ただ、候補者のみなさん、および党員のみなさんが、このマニフェストをどこまで理解し、本気で取り組もうとしているのか、個々の立候補者レベルでみると(現職の議員も)不安になることはけっこうあるので、しっかり党内で浸透を図ってください…。
公明党
【外国人の社会保険料等の未納状況に係る情報を在留審査に適切に反映するなど、外国人の社会保険料等の未納を防止するために必要な仕組みの構築を検討し、さらなる在留管理の高度化をめざします】
昨今の不景気、経済状況から、日本人にだって未納者は増えているんでは?(そこに関しては「社会保険料下げろとか、賃金を上げろとか、そういう議論になりますよね?)なのに、外国人は「ここにいる資格なし」とばかりに在留資格審査にマイナス要因になるよ!と脅かして納付させようとするの、社会保障制度の主旨を逸脱していませんか?福祉と教育の公明党じゃなかったんですか? 自民党との連立与党だからこうなるんでしょうけれど、権力の座に甘んじて、初志をお忘れでは…(在日コリアンの創価学会員さんたち、そこそこ多いと思うのだけど、どうお考えなんだろうか)
ただ、誠意を感じる(自民党の乱暴さに比べたらマシ)部分もあります。
たとえば
【外免切替については、知識確認問題数の大幅な増加、難易度の上昇、実技試験の充実、短期滞在者の外免切替の禁止など制度の厳格化を進めます。また、外免切替による運転免許取得者の事故件数等に関する調査の実施を推進します】は、私も同意です。外面切り替えが容易すぎるのでは?という疑念(それが転じて「外国人優遇」という差別煽動を呼び込んでいる)に対し、問題点を明らかにするために調査して変な差別的言説が広まるのを止めてほしい。また、中長期滞在者と短期滞在者を区別せずに雑に論じることは避けなければいけないので、そこに言及していることも評価できます(ただし、本当に外国人による交通事故が増加しているのかも、それが外免切り替えのせいなのかも、私は懐疑的です…)
日本語教育支援や、外国人市民への相談対応の問題などは、福祉と教育の公明党さんだな、と思えます。その文言と「在留管理の厳格化」云々は矛盾しませんか?と私は思いますが、おそらくそこには「適法に在留している」外国人ではない、非正規滞在状態に陥った人は「不法滞在外国人だから基本的人権も保障しなくていい」という自民党ロジックがあるのでしょうね…。人間にそんな線引きを持ち込むのは、基本的人権理念に反してますけどね…。
日本維新の会
「書きぶりが卑怯」の筆頭格。思えばこうやって日本語を破壊してきたのがこの政党だったよ…を改めて実感。ツッコミどころしかない…。
【外国人の無秩序な増加や地域摩擦の弊害を踏まえ】【・・・などの制度が一部外国人に集団的に濫用されている現状】といった書きぶりはミスリード(卑怯)です。この数年、指摘されているビザでの入国が急増しているのは事実ですが、「無秩序」という形容がおかしい。特定技能、技能実習の受入れだけでは追い付かず、「技術・人文知識・国際業務」や「経営(起業)」の在留資格を積極的に出して労働者をかき集めているのは日本政府の方針。それがあって入国者が増えているのに、一方的に勝手に押しかけられているかのような印象操作も甚だしい。医療制度をはじめとする社会保険制度が「濫用されている現状」があるのかどうかも疑わしい(医療ツーリズムの推進による、その利用者の問題とかき混ぜているのでは? ただ、医療ツーリズムなら全額自己負担のはずだし、そもそも保険加入していない人は全額負担なわけだし)。よく「3ヶ月住んだら健康保険に加入できるから」という嘘が流れていますが、短期ビザを更新して結果3か月を超えれば加入できるわけではなく「3ヶ月以上の在留資格がある」ことが条件だし、「加入しろ」と義務付けているのは日本政府ですが? 近年日本に来て増えているボリュームゾーンは青壮年の働き盛り層、つまり自分自身が医療にかかることは少ない年代です。むしろ日本で働いてくれている生産年齢の外国人が、日本の健康保険制度の一角を支えているという方が正確だと思います(だからこそ加入を義務付けているはず)。最近、外国人の納付率が日本人より30%ぐらい低いというデータが出ていましたが、日本人も自身が医療にかかることの少ない若年層は「保険料高い。下げて手取り増やしてくれ」って言ってますよね?(それに乗っかって世代間対立煽ってるのも維新だった、そういえば……)母国にこういう制度がなく自分への直接的なメリットも今ひとつわからないのものに「義務ですから!」と加入させられてもピンとこなくて払わない……というのは、仕方がないのではないでしょうか?加入せずに何かあったら全額負担になって、こんなに自己負担が変わるんですよ?ときちんと説明してるのか?をまず問わないといけないんでは?と思います……(それがわかってる日本人有権者も「保険料高い!」と文句言ってるというのに……)
【無許可営業や文化財被害、試験不正など外国人による違法行為の増加に対応し、入管庁・地方局の体制強化や警察・自治体との連携で迅速な対処を図ります。さらに罰則・送還制度の実効性を高め、帰化審査の厳格化と取消制度創設により、治安と国籍制度の適正化を進めます】
不正に対応するのは当然のことだし、既にそれは行われています。それに乗じて「送還制度の実効性」帰化の「取消制度創設」を主張するのは、外国人に対してのみ過重罰を与えろという主張であり、看過できません。
「国籍制度の適正化」というなら、日本生まれであっても権利として日本国籍を取得することができない現行国籍法の不合理さの方を問題にしてほしい。その国籍法のせいで、日本生まれ日本育ちで生活実態としては周りのマジョリティ日本人から「もう日本人って言っていいんじゃない?変わらないよね?」と言われてしまう人たちをも、退去強制の対象にし、いったん認めた国籍を取り消される対象にするというのでしょうか?
※「日本人って…」発言はアイデンティティをガン無視の問題発言ですが、あえて書いたのは、「そう思って何が悪いの?日本人と変わらない、特別に感じないから差別もしてないよ!」と思っているタイプの人で、上記に引用した主張に「だよね、迷惑外国人は出ていけばいいよね!」と素朴に同調している人が多いのではないか?と疑うからです。まじめに生きようとしていても、道を誤ることはありますよね。わずかな瑕疵も許されず、常に善行を生きていなければ「今ここに暮らしている権利」を剥奪されても仕方がないとされる、その暴力性に気づいてほしい。
こんな主張がまかり通るって、基本的人権とは何か?ということがそもそも全然浸透していない社会だからなんだろうな…(つら)
【医療保険や運転免許、経営・管理ビザなどの制度が一部外国人に集団的に濫用されている現状を直視し、実態調査とビザ条件の厳格化を進め、法令の抜本的見直しにより国民が納得できる制度へ再構築 します】
この「国民の納得」というロジック。LGBT理解増進法のときも同様だったけれど、マジョリティの理解と納得の範囲内でしかマイノリティの人権なんて認められませんよというこの発想に同調してしまう人が「日本人ファースト」に持っていかれるんだとも思います。しつこいようですが、そんな線引きを持ち込むことが基本的人権という人類の普遍的価値に喧嘩を売ってるんですよ? 日本国憲法も世界人権宣言もガン無視か…
国民民主党
【我が国における土地の取得・利用、管理をめぐる最近の状況に鑑み、・・・それを踏まえて、大正14年制定の外国人土地法の改正も選択肢に入れ、実効的な外国人土地取得規制案の成立をめざし、不動産投資規制などにより我が国の国土を守ります】
これも「最近の状況に鑑み」という文言でミスリードを誘ってる…と思いました。そもそも「外国人による土地取得が増加している」と雑に言われているけれど、どういう人が、どこを、どういう目的で購入したのかを詳細に見ることなしに、購買者の国籍だけで数値を見て「買占めが!」というのはおかしい。思わず「外国人土地法」を調べてしまったけれど(戦後廃止された法律を「改正」て?)「日本人による土地取得に制限を設けている国に帰属している人が日本の土地を取得しようとすることを制限する(相互主義)」が最初に書かれていました。日本人・日本の法人が海外の土地を購入して、工場を建てたり商売したり、してますよね? だったら外国から日本に対してそういう動きがあってもお互い様でしょう…。
要は日本が貧しくなった、土地が安い、人件費も安い、だから資本がこちらに動いてくる、というだけではないか。そういう事例を一つ二つ取り出して「乗っ取られる!」と過剰に煽って不安を増幅させているのはだれなのか、何のためなのか、です。
入居差別も厳しいので、いっそ中古物件を買おうと考え、そうしている人たちを少なからず知っています。また、維新のところでも書きましたが、国籍法が時代遅れの血統主義オンリーだから、日本には2世代目、3世代目で日本にしか生活基盤がない外国人も多いのだから、日本人と同様にマイホームを購入したり、ビジネスとして土地取得をしたりする人だって大勢います。在日外国人、特に長くここで暮らす人による土地取得と、近隣住民とどう共生するかに頓着なく、ただ金儲けに利用したいだけの投資家によって海外から行われる土地取得とは区別すべきでしょう。そして、そういう下品な海外投資家の行動って、日本が途上国に対してやってきたことが、いま日本で再現されているだけではないでしょうか…。私には既視感ありますけどね(だから多めに見てやれと言いたいのではなく、かつての自らを顧みて恥じ入ってから、対策考えろ!と思うのです)
その他、労働環境や教育の問題については穏当かな…と思いましたが、目新しいことは一つもなく、現行の「外国人材の受入れと共生についての総合的対応策」や「外国人との共生のためのロードマップ」に書いていることの焼き直し。なので、あくまでも「労働力を確保するため」ということなのだろうな(来日する人たちのQOL、人権保障という観点ではなく、あくまでも「人材」として大事だからという感じ。抽象的にいいように書いているだけで、本気度は?って感じです…)
日本共産党
さすが原則的、という感じ。国際人権基準に沿った対応策・改善策の提案。
れいわ新選組
【在留外国人を「管理」する法制度ではなく、外国人の権利を守る法制度へと改定する】と言うだけあって、マニフェストに書かれていることに異存はないのですが…。
【技能実習制度などは、国内労働条件の悪化の原因でもあり、廃止する】という点について、候補者が街頭で「日本人の賃金水準を下げている外国人労働者」というロジックで語り、技能実習制度を廃止したいのか外国人労働者を追放したいのか、どっちなの?みたいな姿を見かけたのが引っかかっています。
また、90年代ならいざ知らず、現状はもうそんなところは通り過ぎていて、日本人と同程度の条件を提示できなければどんな労働者も集まらないという段階にきているのに、何を言っているんだ?とも思います。私も技能実習制度は廃止したほうがいいと思っていますが、「低賃金の使い捨て労働者の供給源」という見方はズレてきています(そう思っている雇用者はいますが、そのせいで労働者に逃げられたり、労基署から指導されたり、監理団体の認定取り消されたりしているのが現状。そもそも以前から、ちゃんとした受け入れ企業さんからしたら、相応にお金は掛けて企業福祉も充実させて受け入れてるのに「安い賃金でこき使う」イメージで語られることへの不満が渦巻いてましたし)。むしろいまの現場の関心事は「長く働いてくれる熟練労働者としていい人を確保したいのに、特定技能だの育成就労だのの小手先の修正で問題が労働力不足は解決できるのか?」だと思います。国内の労働条件が悪化している原因は外国人労働者だけにあるのではなく、日本経済が停滞しているからでしょう。技能実習制度ではなく、賃金や雇用の問題として議論すべきではないでしょうか…。
社民党
きわめてシンプルに最低限の、しかし最大の課題である「罰則規定のある差別禁止法制定」に言及。
(他に争点は山のようにあるわけで、「そんな問題が本当にあるのか?」的な世間の空気を根拠に政策論言ってもしょうがないよね、そうだよね…と思ってしまいました。長々書いている他政党、国民民主党のところでも書きましたが、けっきょく内容は「外国人材の受入れとー」に書いてあることだったり、根拠の?な世間の声に乗っかってる主張だったり、でしたし…)
参政党
いろいろ書いていますが、「いや、今の入管法と入管の仕事ぶりそのままですけど?」でしかありません。日本の法制度は今も十分すぎるほど、外国人に対して管理的なのに、知らんのか?(知らないというより、興味がないのだと思う)
【帰化や永住権取得の要件も厳格化し、日本への忠誠心や生活実態をしっかりと確認できる制度にします】【外国人参政権は一切認めず、帰化一世にも被選挙権を付与しない方針を明確にします】と、同化と排外の人種差別丸出しの文言を公然と掲げて選挙に出てくる、極右政党としか評価しようがありません…。
そもそも、帰化制度は現状でも厳格です。これ以上何を?です。その審査をクリアして日本国籍を取得できる人に対して、さらにまだ「忠誠心」などと審査しようがないことを持ち出してジャッジしようなんて、大日本帝国の特高警察か!?憲兵か!?帰化して日本国籍取得した人に、選挙権を認めないってなんだ? 意味が分かりません。
よく「そんなに差別が嫌なら/選挙権が欲しいなら帰化すればいい」と言う人がいますが、そういう方には、帰化したところでこういう言説の輩に攻撃される、差別されることをどう考えるのか、伺いたいです。「帰化すればいい」と言う限りは、帰化したあかつきには絶対に差別に遭うことがないことを保障できる日本社会づくりに努力してくださいよね……
さいごに
つらつら書いてみましたが
日本は国籍法の問題で、日本で生まれ育っていても日本国籍がない人が大勢います。そういう人まで含めても、在留外国人数は全人口の3%しかいません。その3%が、97%にさも「仇なす」かのように言い立てて脅威を煽ること自体、空虚で妄想的だと私は思います(ま、そう言うと「帰化外国人がー」という荒唐無稽陰謀論を持ち出してくる状態になってしまったら、もう説得できる相手ではないのかなと思っています。なので、そんな陰謀論に毒される前に、おかしさに気づいてほしい…)
外国人は、自分が知らない、関与できないところで決められた法制度に縛られ、管理されている存在だということ、その管理をさらに厳格化し、人を選別して「用がない、役に立たないから追い出す」ことができるように法改正しようとする発想が、いかに非人道的かに、気づいてほしい。そして有権者は自分が行使できる一票の力に自覚的に、良い方向で使えるように考えてほしいです。
もちろん人間だから、変な人もいるしトラブルを起こすことだってあるけれど、そんなの、国籍に関係ない。そして、そんな人間臭い外国人たちが、私たちの生活を支える労働者、消費者、生活者として、この社会に共に生きている。すでに共に生きている隣人なのです。
いい加減、「受け入れてやっている」という上から目線を棄てませんか?
「受け入れてやっている」と思うから、存在をジャッジできる、こちらの都合で動かせる、そんな傲慢な態度に出ることができ、そのおかしさに気づけないのだと思います。対等平等とはどういうことか、「基本的人権」という普遍的価値を手掛かりに、選挙に臨む人が増えてほしいと思います。