わったり☆がったり

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@Seoul 現代史を巡る旅で考えたこと_オマケというか「わたしたち」編

市民活動のハードルについて

いまBTSの釜山コンサート(万博誘致活動の一環としての)を巡って、何やら???が次々に発覚して「HYBE(彼らの所属会社)なにやってんの…!?」状態なんですけど。韓国ARMYたちがそういう問題に対してしっかり会社や釜山市に抗議をしているようなんですよね。「問題や事故が起きてからでは遅い」と。

前々から韓国でよく思うのは、とにかく社会に対するスタンスが違う。「私も社会の一員である(責任がある)」という自覚とか、「社会は自分たちで変えていくもの・つくりあげるもの」という感覚とか。参加者意識というのかな。

この写真は「戦争と女性の人権博物館」にいったあとで、連れて行っていただいたカルグクス屋さんの壁。このお店自体が再開発による立ち退きに抗議する主体の一つだったそうで(左下の写真)、その当時からのつながりで今も社会運動に関するポスターやチラシがいっぱい貼ってあるそう。黒いポスターは差別禁止法を求めるものの一つ(店内に何パターンか、違うイラストのものがありました)。「すべての差別に反対する」と書かれています。ポップ!
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植民地歴史博物館でも、三一運動をモチーフにしたこういう壁面装飾があったりして。西大門刑務所博物館(国の施設)…では、キーパーソンから独立運動を辿っていく、歴史をふりかえる、という感じだったけど、こちらは特定のキーパーソンに焦点化するというより、名もない市井の人たちの生活や行動、そういう人たちが接した情報はどんなものだったのか…といったところに力点があるなぁと思いました。「英雄をつくらない史観」とでもいえばいいのかな。人びとの連帯に焦点化する感じ。

戦争と女性の人権博物館に続く道すがらも、こういう壁画があったりして。

1人の力ではなく、手をつないで考えていこうというスタンスをそこここで感じて、それが気持ちいいのです。戦争と女性の人権博物館を運営する団体は「正義記憶連帯」といいますが、韓国では何か社会問題が起きるとそのイシューに対して「(なんとか)連帯」というゆるっとした連絡体みたいなのができて、賛同する労働組合や社会団体、個人がつながって動き出すスピードが速いんですよね。日本だと、誰が代表になるんだとか事務局どうするとか会の規約は…とかスタートする前の調整が一苦労な感じ(あくまで印象ですが)。韓国はとにかくやらなくっちゃだから、細かいところは走りながらでいい? みたいな感じ。もちろん、どちらも一長一短だとは思いますが。

タプコル公園と道をはさんだ、仁寺洞の端の広場のとこで農学(プンムル)やってたのですが、みんなわちゃわちゃ混じって楽し気に参加しちゃってて。こういうのも、参加したかったら入るし、疲れたら抜けるし、超楽しそうだなぁと眺めてました(そしてみんな、踊るのうまい。沖縄で、みんなカチャーシー踊ってしまう、あの感じと似ている…)

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植民地歴史博物館も、戦争と女性の人権博物館も、運営しているのは日本でいう非営利活動団体で、寄付金収入や会費に多くを頼るわけですが、聞くところによると、韓国では「それなりの収入・給与所得がある大人」がそういった社会活動団体に寄付をするのはポピュラーなことで、毎月「ここに一口、あっちに一口」という感じで5000円程度を数団体に振り分けて「私は今こういう活動を応援してるんだよねー」みたいな感じだと。そして、モンダンヨンピルはなんと会員3000人! え? どうやって運営? と衝撃的なその数字。質問もしたけど、お話の後、サムギョプサル屋さんでビール飲みながらさらにお話聞かせてもらったのです。f:id:jihyang_tomo:20220908104046j:image

事務局長にサムギョプサル焼いてもらってしまう……(映画『ウリハッキョ』の監督でもある)。おいしかったー。はさておき。

3000人はさすがに珍しい現象らしいのですが、事務局長がおっしゃるに、「楽しい活動をして、会員がただのお客さんにならないように工夫はしている」とのこと。会費が月々○口…という方式なので、毎月の収支報告をして会費の使い道を知らせること、会員同士で集まって読書会をしたり映画を見たり、そういう活動に事務所の一角を使ってもらうなどして「気軽に立ち寄れる」場にすること。参加できる活動リソースを複数つくる、運営を会員に任せる、交流する…etc。「ダメならやめるだけなので」という、スタートアップの軽さ…。「さすがに3000人は多くて顔が見えてないところもあるので、ちょっと不安(笑)」とも言っておられましたが、若いスタッフもきちんと雇っているし(「搾取はダメですから!」と、そこに至るまでの話もおもしろかった。見習いたいけど、なかなかな…と悩ましい)

てなことで、社会参画へのハードルが非常に低い。いいことならやってあたりまえ。自分はこういう社会がいいと思うから、ここを応援するよ!という話もあたりまえ。ただ、それでもセンシティブで対立しやすいイシューというのはあって、それがいまマックスなのが性差別だと。歴史問題はハードルが低い方。

うーん…。

 

性差別をめぐる対立と葛藤

歴史について、特に近現代史は学校でガッツリ教わるから一通りのことは知っているけれど、とにかく項目が多すぎるので、例えば徴用工のことも日本軍「慰安婦」のこともそんなたくさんある項目の一つに過ぎなくて、詳しく知っている人はそう多くないそうです。

で、ややこしいのは、いま起きている性暴力の問題、ミソジニーへの問題提起については反発するのに、日本軍「慰安婦」の問題は抵抗なく、むしろ「日本はけしからん!」で盛り上がる層がある。要は「俺の女に手を出すな」的な、家父長制どっぷりの怒りで問題をとらえてしまう人たち。でも正義連をはじめ水曜デモに集まる人たちは、女性の人権、性の自己決定権を巡る問題だととらえているから、噛み合わない。水曜デモをバッシングする人たちは、「日本VS韓国」の歴史問題の対立構図でないとバッシングできないので、日本人の支援者が来てアピールしたりすると、ヒートアップするらしい…(捻じれすぎてないか…)。

韓国には国家人権委員会というのがあるので、水曜デモへの妨害などは通報していて、委員会から警察に「水曜デモをきちんと警護しなさい」と勧告も出ているけれど、警察は妨害右翼の肩を持っている感じだとも聞いて、日本と一緒やな…と。そんなとこは似なくていいのに…。

女性差別や性暴力の問題もだけど、さらにしんどいのは性的マイノリティへの差別で、バッシングもヘイトスピーチも酷い。芸能人も迂闊なことはいえない雰囲気だから、レインボーパレードに参加するなんて、無理無理無理無理!な感じらしい。日本とは逆。日本だと歴史問題で迂闊なこと言えないけど、レインボーパレードはハードル低いですよね…(ハードルが低いだけで取り組めているかどうかは別だけど)。芸能界で同性愛であることをカムアウトしている人も若干名いるけれど、それは「あの人たちは特別」とくくられておしまい、みたいな感じらしく……。うーん。なんかつらい。

そして、歴史問題についてハードルが低いのは、「みんな知っている」のもあるし、いまの20代だと完全に「日本と対等」で、良くも悪くも日本に関心がない。で、社会的に話題にのぼる日本は「歴史問題」なので、日本と言えば「歴史問題」みたいになっているからかも? と言われて、おお、そうなのか…と。たしかに仁川空港に着いたときの、「こんなのもこんなのもこんなのもあるよ!」という広告の多様さに比べて、日本の到着口、マリオ、ニンテンドー、…そんだけ? みたいな感じやったもんな…。文化コンテンツでは完全に韓流が勝ち組。それが「韓国すごいでしょ?」という変なナショナリズムにならないか心配、とも伺った。なるほど…(でも日本のように根拠もなく「クールジャパン」とか言っているより、現実に即しているだけマシな気もするけど、どうなんだろう?)

そして、なんだかんだがんばっても、相変わらず格差も学歴競争も厳しいし、社会活動にコミットして社会を変えていこう!というノリよりも、個人のスキルを磨いて如何に生き残るか、個人主義的な感覚が広がりつつある(特に中間層より上)ともいわれている様子…。連帯文化、失われてほしくないけどなぁ…。

数年後の韓国がどうなっているのか、そして日本がどうなっているのか、油断せずに自分が成すべきことを探して生きて行かねばな…と思うのでした。

 

そんなこんなを聞いていて、BTSも、国連で演説したりホワイトハウスでアジアンヘイトについて語ったりはできるけど、韓国内のセンシティブなとこでは意見できないんだなぁと、なんかしみじみ悲しくなってしまったのでした。

贔屓目もあるけど、きっと、悶々とするとこもたくさんあるんだろうなと思う。つらい。スーパーセレブとはいえ、アイドルという立場は弱いんだな……。6月の会食はなんだったんだろう。彼らの訴えをちゃんと聞いてあげて! と思う今日この頃。

そんなこんな、あれこれ考えながら過ごした私が日本に戻ったら、この人も日本から韓国に戻りましたよ。どういうことだ(笑)あまりにもバッチリすれ違っちゃって、これも何かのご縁?(そんなわけがない)

いまは、10月の釜山コンの無事を祈るばかり。まわりの大人たち。お願いだから、彼らが傷つく顛末にならないようにしてよね……たぶん(いやきっと)繊細な人たちなんだから……(息子を見守る母の気持ち)
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