わったり☆がったり

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@Seoul 現代史を巡る旅で考えたこと③

今回、ソウル・イノベーション・パーク(서울 혁신 파크)の研修棟というところに宿泊していました。イノベーション・パークは「社会にイノベーションを起こす」ために、元ソウル疫学センターだった建物を改修して2015年に誕生したソウル市の施設。

当時の朴元淳市長の肝入り政策(だっただけに、対立してた側が市長になり市議会の勢力図も保守寄りになったいま、予算をどんどん縮減されて、どうやら規模も縮小される見通し…悲)。と、そんな悲しい情報も得てしまいつつ、民主主義のために活動する市民の話を、③では多めにまとめてみようと思います。

イノベーション・パーク

この建物がもっとも中核で、パーク全体の運営事務局も、ここに。パークの中核事業はソーシャルベンチャーのスタートアップ支援です。110団体がパークに入居して活動しています。ビッグイシューコリアの事務所も、上の写真の建物にあります。f:id:jihyang_tomo:20220908102909j:image

私は2017年にも来ていて、そのときはまだここの芝生も育ってる最中…みたいな感じでした。宿泊した研修棟などは「これから建てます!」の工事中で、何を聞いていても「夢が広がるなぁ…」とワクワクしたのに(涙)
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近所の人がウォーキングしてたり、子どもが走り回ってたり、犬の散歩やお茶してる人がいたり(カフェも敷地内に数か所ある)、近所にこんなとこがあったら楽しいなぁーの施設なのですが、現ソウル市は敷地の一部を売却してショッピングセンターにしたいらしいです(その方が地価が上がるらしい…ソウル市の悪いとこ加速するだけやないの! と部外者は思いますが、地元の人たち、どうなんだろ…)

イノベーション・パークがいう「イノベーション(革新)」とは「新しい価値観を創造する/新しい社会をつくろうとする」ことで、その志がある団体や個人の活動を支援することで、社会変革の基盤をつくろうというのが、元のコンセプト。朴元淳氏がもともと民主派の弁護士で(朴槿恵政権がキャンドル革命で退陣し、文在寅が大統領選に出たわけですが、あのときソウル市長の任期が残っていなかったら朴元淳が立っていただろうといわれた人物。ただ、最後がものずごく残念だったので、何ともモヤモヤはしてしまうのでした…モヤモヤ内容はこちらに書いたのでこちらを)

ということで、2015年に誕生してから今までに、「どんな革新が起こせたといえますか?」と質問したら、「自転車の普及」という答えが。
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入居団体の一つ「約束の自転車(약속의자전거)」が自転車レーンの整備や市内で利用できるレンタサイクルの仕組みづくりなどを政策提言し、交通安全教室の実施やサイクリングイベントなどを実施してきたそうです。ソウル市の交通事情(車が多くてすぐ渋滞するし、事故も多い)や、CO2削減の機運、コロナ禍でのライフスタイルの見直しなどの状況も働いて、この数年で急激に自転車が普及したそう。たしかに、これまであまり見かけなかった自転車が、めっちゃ増えてました。ソウル市内。
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これ、レンタサイクル。レンタルの電動キックボードもあって、おそらくスマホで手続きして暗証番号かなんかが送られてきて入力すると乗れる、みたいな仕組みなのだと思われます(この写真はこの自転車のためのスペースっぽいけど、「え? 乗り捨て?」みたいにポツンと放置されているのもよく見かけたので…)。たしかにこれはソーシャルベンチャーかも。

ちなみに、わが愛する推しもやたら自転車乗ってるのですが、こういう背景を知っているんだろうか…知っててほしいなぁ…そして「イノベーション・パーク大事ですよね」とか言うてくれんかな…とないものねだり。f:id:jihyang_tomo:20220909134304j:image言うてくれんかなぁ……

そして敷地内には、木工などの作業所や、再生プラスチックの作品作りができるFABラボなど、市民のQOLを上げることに貢献する施設というのもあって、手作業DIYの工房では家具づくり、まな板づくりとか人気らしいのです。大きな裁断機や、最新のレーザー裁断ができるような作業部屋もあって、子ども向けから大人向けまで、各種プログラムがソウル市民は無料で利用できます。ただ、ここも予算削減でスタッフが減らされ、プログラム数激減…らしい。市民は仕事帰りに立ち寄ってDIYとかにいそしむのが「新しい趣味!いけてる!」みたいなノリで利用しているそうなのですが、それでも予算減らすのね、ソウル市…悲)

木工といえば、このまえSUGAさん、Vlogで職人みたいにまな板つくってましたよね! ここでもつくれるんだよ! 「うーん、そういう場はたくさんあるといいよね」とか、ソウル市に言ってやってください……(何なら、ここで家具づくりどうですか!)
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と、ちょいちょいBTSをネタにしてしまってすいません……。

 

戦争と女性の人権博物館

私はナヌムの家に2回ほど行ったことがあるのですが、それももう10年ぐらい前。こちらの博物館には初めて訪問しました。

博物館までの坂道でも、両脇にカラフルなイラストがあって、私たちを案内してくれます。この写真は入ったところにある、来館者のメッセージが貼られたボードの一部。こういうのを見ると、ほんとうに勇気づけられます。

展示は、日本軍「慰安婦」の被害者の人生に寄り添うように進行します。

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日本軍「慰安婦」問題をなかったことにしたい人は、いろんなことを都合よく言うわけですが、日本軍側の資料からも、その事実が「あった」ことは明らかなので、なぜそれを否定しようとするのか、否定せずにはいられない心証ってなんなのだろうか? といつも不思議に思います(同様に、南京大虐殺関東大震災朝鮮人虐殺、さらには「朝鮮は植民地ではない」とか言い始めたり。なぜ?)。

男性が、「自分も加害側の性(属性)」であることに、いたたまれなさを感じる、というのは、要は植民地支配の歴史を学ぶときに「日本人であるという属性」にいたたまれなさや後ろめたさを感じるというのと似ている(?)だからわからなくもないけれど、でも日本人だから差別するとか男性だから加害するとか、そういうことじゃないわけだし。具体的物理的な加害行為に及ぶときにはたらいているのは、相手に対する支配欲(自分の思い通りに、完璧にコントロール下に置きたいという欲求)ですよね。性欲でもないし競争心でもない。自分以外の他人をコントロールできるわけがないのに、そのできないことを無理にしようとするから暴力になる。性愛の相手、競争の相手に敬意をもって、相手の意思を尊重して対等に対話してコミュニケーションしていこうとする人は、加害に及んだりはしないだろうと、私は思っています。そう考えれば、同じ属性だからって加害者と自分を同一視する必要はないように思うんだけどな。それに、「あったことをなかったことに」無理やりしたところで、それであなたは救われるんでしょうか…?とも思う。何の解決にもならないのに。

もちろん、性暴力の被害者に圧倒的に女性が多く、加害者は圧倒的に男性が多いという現象を鑑みるに、男性の方が「相手を支配する力」を持たされやすい位置にいる(社会的特権)ということはあるので、その点は考える必要があります。被害者になりやすい属性が嫌だと拒否して返上することができないように、社会的に力を持たされ、加害する/加害に加担する位置に置かれてしまう属性が嫌だから返上したいと思ってもそうはできないので、では自分の立ち位置を把握したうえでどうするのか? を考えるしかない。それを考えるのが、なんかややこしくてしんどそうだから嫌だ…と逃げ切れるのがマジョリティ。逃げ切れないのがマイノリティ。日本軍「慰安婦」問題に即していえば、「女性だから」被害に遭ったというだけでなく、「貧しかったから」「知識や情報から疎外されていたから」「家族のなかで立場が弱かったから」などなど、社会階層や家父長制の側面でもマイノリティだった、複数の「弱み」が交差した人ほど被害に遭いやすい立場にあったといえるわけです。植民地支配、戦争という大きな社会構造のなかで、誰が強者の位置に、誰が弱者の位置にあったのか。構造的な問題として解明していかなければ再発防止はできません。だから「あったこと」を正確に、詳らかにする必要があるのです。

日本軍「慰安婦」被害者である女性たちは、女性に対するすべての暴力に反対する、人権活動家でもあります。世界各地の性暴力被害に遭った少女たちを支援するための「ナビ基金」を設け、世界中の被害者・サバイバーと連帯し、活動するその姿に私も励まされてきたし、後に続きたいと思います。この砂時計は、いまも「2分に1人の少女が性暴力の被害に遭っている」ことをふまえて「2分」を味わってみてください、と棚に置かれていました。それが世界の現実だけど、わたしたちはあきらめない。

10年以上前、ナヌムの家で「ここには謝らなくていい人ばかり来るよね」と言われ、泣いてしまった女子学生に「私たちはあなたみたいな女の子がもう泣かなくていいように活動してるんだから。泣かないで。一緒に頑張りましょう」と言ってくださったハルモニに会いました。今も、謝るべき人はここに来ず、謝らなくていい人ばかりが来るわけで、ほんとうに情けない。でも、諦めない、連帯の力もここにはあります。

展示を見学した後、最近の韓国の状況、特に2016年から盛り上がった韓国#metoo運動へのバックラッシュともいえる厳しい状況も伺って、日本と同じやん…と暗澹とした気持ちになってしまいました…(水曜デモへの妨害も激化しているそうです。その様子を聞いていると、ほんとうに日本のヘイターと同じ。たぶんつながって協力し合っているのだと思う…そういう連帯はいらん…)。でも、そういう話を聴いていて、よりクリアになったのは、対立軸は国境ではなくて、性暴力に反対か否か、人権侵害にNOを言うか否か、であって、国家の問題でも外交の問題でも、もはやないんだなということでした。日本が国家として、大日本帝国が犯した罪を引き受けて謝罪すべきなのはもちろんですが、それも国家間の歴史認識の違いの問題などではなくて、かつて人権を踏みにじり、他者の尊厳を組織的に棄損したという事実をどう受けとめるのかが問われている問題なのだということ。いま・ここの性暴力に甘い社会、性差別を「その程度のこと」と軽く見て、被害者に沈黙を強いる社会を許すことと地続きだから、ハルモニたちは闘ったし、私たちも闘いにつながらなければならないんだなということを考えました。

 

モンダンヨンピル(몽당연필)

日本の朝鮮学校を支援している市民団体。조선학교와 함께하는 사람들 몽당연필

ここでの交流会が最後のプログラムだったのですが、韓国の市民運動のパワーというのか、社会の特徴というのかも含めて、非常に考えさせられたし、刺激を受けました。ので、そこは「オマケ編」で別途書いてみようと思います…。

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窓ガラスに映り込んでるやーん(笑)

 

9/14追記:ソウルのレンタル自転車(타릉이)について

2015年から設置が始まってたんですね。

ソウルは坂が多いから、乗りやすいとこだけ乗る、自転車はシェアする、というこの形が合理的なのかも。

타릉이(タルンイ):韓国語で自転車のベルの音を「タルンタルン♪」と表現するところからきています。