わったり☆がったり

왔다 갔다(行ったり来たり)な毎日です(*^_^*)

SVP韓国教育視察ツアー3

さてさて。
今回のツアーはSVP(スクール・ボイス・プロジェクト)主催なのですが、中の人は旧知の、そしてその主催ツアーは過去にも行ったことがあって、わかって参加してるはずがコロナ禍での家籠り生活&その間に年齢も重ねた故か(?)

「あー、そやった。このツアーはこうなるんやった…」

としみじみ脳ミソも身体もお疲れ気味になって、いつまでも行けると思うな(ハードモード)海外旅行・・・と自戒しつつ始まった3日目(笑)

 

8月13日午前:実践教育教師の会/現場の先生と交流

실천교육교사모임 …「実践教育教師」は漢字語ですが、「모임(あつまり)」は固有語で、「会」じゃないとこが好きだなぁと思いました(個人の好みです)

www.koreateachers.org

いま、上のWebサイトあけると、トップに菊の花(7.18.に亡くなった先生への追悼)が出てきます。「紹介」の最初に「実践を通して変化をつくります」とあって、それだけで共感度大。教師は実践してナンボですよね!

お話してくださったのはお二人とも小学校の先生(ソウルではなく、他市の公立)下の写真は、そのご著書で9刷とかになっているものも。信頼の厚い実践家なんだなぁと思いました。(「声かけ」「発問」等など含めて「말공부(ことばの勉強)」と表現するんだなぁ、この表現も好きだなぁと思うのでした)

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さて。

初日の全教組でも伺った「教権」問題…。

そもそもこの実践教師の集まりも「外部からの要請ではなく現場のNeedsから、学校現場・教育をより良いものに変えていきたい」という思いで始まったそうで…。

日本でも、教育/学校に対して外野が好きなことを言い、政治家が中途半端に手を突っ込んで現場がふりまわされる現象は珍しくないわけですが、韓国はそれがさらに厄介な話になっているのだということがここでようやく納得できました。

まず、法律の問題。

*学校暴力予防法
本来は「いじめ防止」がねらいで、小学生~高校生までの学生が規制対象。ただこれが拡大解釈というのか「子どもが被害者/加害者になった暴力沙汰は全部対象」かつ学校外で起きたことまで学校が調査し指導しなければならない?ということになっていて、教員の業務負担を増大させてしまっていると。

児童虐待防止法
文字通り、子どもを虐待から守るための法律なのですが、被害申告があった場合に「有無を言わさず調査する」規定があり(そもそもは被害申告する子どもの方が立場が弱いから保護するためのはずですが…)、そのために「教員から虐待された」と申告があると即座に現場から離されてしまう運用になっているらしい(いきなり懲罰?みたいな)。そして、そういう仕組みを知った一部の保護者や学生が「気に入らない教員を訴える」道具として悪用することが広がっているらしい…。

具体的にどんな困ったことになるかというと、子ども同士の喧嘩(暴力沙汰)や明らかな授業妨害行為が起きる→「学校暴力防止法」観点からいえば教員は指導責任があるので状況を把握・記録して指導を考える必要がある→とはいえ、直接介入(暴力を制止)した行為を「教員に暴力を振るわれた!」と訴えられるリスクがあるので介入しづらい→結果、その場をスマホで動画撮影して記録に残したうえで、事後対処するしかない……。

しんどすぎる。

だから指導に苦慮してメンタルをやられる教員が続出しているのに、管理職は守ってくれないし、まわりに話しても「しんどいのはみんな同じ」とスルーされるし…という状況が広がっていて、そこに7.18.のできごとが起きたから、「他人事じゃない」という共感が広がっているのだということでした。

(ちなみに亡くなった先生も、そもそもは2年生の子ども同士の諍いの仲裁を巡って加害児童側の保護者が「指導のやり方がおかしい」とクレームを入れたのが始まりで、ずっと直接その先生の電話にクレームと人格攻撃が入り続けたのだそう。そもそも管理職何してんの? と思うし、なんで担任個人の電話番号でやり取りさせるのよ!と思うけど、韓国ではありがちらしく(!?)担任が保護者の声を聞くのは良いことだ電話番号を教えることを奨励する管理職の方が多いらしい……。さすがにそこは日本がマシかなと思ってしまったけど、日本も管理職や委員会が引き受けずに担任に押し付けて担任が疲弊する問題はあるからな…と思いなおしました。50歩100歩だ)

支援教育(インクルーシブ教育)についてのお話も、権利保障のための法的整備はありつつも、じゃぁ実際に教室に受け入れて「ともに学ぶ」ってどうすることなの?のところで知識やスキルのある教員が圧倒的に足りていないんだな…ということを感じました。当然、管理職も「無知」。まぁ日本もヨソのことは言えませんが…(最近、大阪のフツーは日本の非常識だったのだなと実感させられることが多い。そして「大阪のフツー」と言いつつ、そのフツーがまかり通っている地域は限定的で偏りがあるのも現実)。特性のある子どもに対する理解がない、子ども同士の関係性を育む指導が追いつかないことが教室内のトラブルの原因になっている面もあり、トラブると上記のような展開になるので、いまのままでは現場の先生たちが「どうすればいいのかわからず孤立する」「統合なんていらない、分離教育すべきという意見が広がる」ばかりになる…というお話は切実でした…。

そんなこんなで、いま韓国社会で教育を巡ってホットイシューになっているのが「教権侵害」で、7.18.を受けて教員団体6つが共同声明を出しています。そこでの要求は4つ。
1.生活指導権限の保障(分別のない告発の防止)
2.授業妨害する学生を制止する権限の保障
3.教員個人の携帯電話にクレームを入れない仕組みづくり(管理職対応の徹底)
4.特別支援教育の充実

なんとささやかな要求…(涙)

ここまで聞いて、ようやく問題の解像度が上がっていろいろと納得したと同時に、この先生たちと日本の先生たちがつながるといいなぁと。

すごく印象的で、そのとおり!と思ったのが、「いろいろな問題があるけれど、背景にあるものを一言でいえば『関係性の断絶』だと思います」ということばでした。

もっと背景にあるのは、韓国社会の格差と、格差ゆえの競争主義。そこで起きる未成年の事件(暴力行為含め)に対して社会の目が厳しいせいもあるが、いまの法律運用はとにかく「処罰中心」で教育的ではない。だれが加害者か、被害者かという仕分けにばかり注意が向いてしまうし、子どもたちもそんなふうにしか事象をとらえない。子どもにせよ大人にせよ、行き違いや諍いは「起きるもの」であって、そこからどう仲直りしていくか、どう関係性を構築するかの方がよほど大切で、教育が力を発揮するのはそこだと思うのに、教員がそこに力を割けない、力を発揮しづらい環境になってしまっているのが問題だ
ーというとらえ方に本当に本当に共感! また、
暴力に走る子どもは、必要なケアが足りていない子どもなわけで、学校にせよ社会にせよ、ケアが不足している子どもたちを支えるシステムが脆弱すぎる。その脆弱さからきている課題を学校に引き受けろというなら、できる環境を整えてほしい。子どもたちに信頼や人への愛着といったものをいかに育てるか、それができる大人が必要だし、教員の専門性もそこで発揮されるべきだと思う
―という話もうなずきまくりでした。

共感する日本の先生、いっぱいいるんじゃないかなぁ…。

クレーマー化してしまう保護者に対しても、やはり問題の根っこは「孤立」にある。子どもが減り、競争的な社会のせいで、隣人と子育てを分かち合う、知恵を貸し合うという関係性が失われているなかで、ネット上の真偽不明な情報に振り回された結果のクレーマー化だから、保護者同士をつなぐ、保護者と学校の関係性をつなぐ工夫も大事だと思っている…とおっしゃていて、もはや親近感しか沸きませんでした…。

そのまま、ヴィーガンなお弁当で一緒にランチしながらお話して、ほんとうに楽しい時間でした。朝の「あーしんどいぞ…」はどこかに吹っ飛ぶ、ゲンキンな私。

美味しかったです……。


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そして、この日はこの後フリータイム! なので、そちらは番外編ということにします。