わったり☆がったり

왔다 갔다(行ったり来たり)な毎日です(*^_^*)

SVP韓国教育視察ツアー 2 午前中編

食べ過ぎた次の日の朝ご飯は食べないことにしている50代です。サムギョプサル帰りにコンビニで買った野菜ジュースがちょうど良きでした。

さて、2日目(8月12日午前の部)

아하!(ソウル市立青少年性教育センター)

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あれ? ここは来たことある…と思ったら、2017年に来た「하자センター」と同じ敷地内・・・。入り口からして可愛い。「아하(アハ)」は、何かに気づいたり感心したりしたときの「あぁ!」「わぁ!」といった感嘆を表す表現だそうです。ちなみに「하자(ハジャ)」は「やってみよう!」

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建物はソウル市のもので、YMCAが業務委託されて運営しているセンター。
(何とソウル市の予算で13億ウォンついていて、フルタイム職員が17人。それに外部有識者の運営委員と、9歳から24歳の「青少年運営委員」が入って活動・・・羨ましい)
青少年保護に関する法律と、ソウル市の「青少年センター設置条例」が法的根拠。2000年設置なので、もう23年目ってことですね。

元々は90年代にYMCAがやっていた電話相談(相談員2人)が始まりで、そこで性虐待の被害から逃げてきた子を守るシェルターもない、性暴力に対する認知度も全然ない、これはダメでしょう! と少しずつ声が上がっていったのだと説明がありました。

「こういう政策は、黙っていても行われません。特にマイノリティの声、被害の訴えは聞かれにくいので、大きな事件や惨事が起きて初めてやっと社会問題化し、行政が動き出すことが多いです」

아하の場合は、1998年に仁川のビル火災(夜間)で10代の子どもたちが大勢亡くなった事件がきっかけだったそうで…。つまり、「家にいられない」「行き場所がない」10代の子どもたちが集まれる、安心して過ごせる場がないのだということが問題として社会的に認知され、2000年代にその整備が進んだということ。子どもの問題は「学校」が注目されがちだったが、子どもが育つ場は「学校」だけではない、「街」も重要だということで、学校外の学びや進路を考える「ハジャセンター」と、子どもたち自身が権利に気づき尊厳を守るための包括的性教育を提供する「アハセンター」ができたのだと説明を聞いて、なるほど…でした。

約30年前、性教育というと「Sex」しか想像できない人たちの方が多くて、なぜ若い女性にそんな知識を与える必要があるんだとか、シェルターなんか作ったら家出が増えるだろとか(こういう反応も似てますよね…どこでもそうなんだろうか。反対する人たちあるある)、あれこれ言われたけれど、私たちがやりたかったのは、セクシュアリティ教育であって、子どもたちが悩んでいる性のアイデンティティのこと、相手との関係性、ボディイメージと自己肯定感・・・をどうポジティブに育んでいくかということで、それはいまも変わらない。反対派/保守派には「性不良センター」と呼ばれてます!アハハハ!と笑い飛ばしておられたのも印象的でした。カッコいい。

そしてレクチャーの後は、研修等にいって、子どもたち向けの教具やワークショップについて紹介してもらいました。どれもこれも超興味深かった…。f:id:jihyang_tomo:20230819111235j:image

こちらは、高学年向け。輪になって座ったなかに、性に関するさまざまな単語(性器の名称だとか)のカードがあって、それぞれについて「これはどういう意味? 何をさす単語?」と知っていることを教え合う活動から、正しい性知識のレクチャーへ進むもの。そうすると、いろんな単語は知っていても意味がよくわかっていなかったり、変な知識とともに覚えていたりするのがわかり、最初は恥ずかし気にしている子どもたちも、だんだんまじめに積極的になるそうです。そして、男性器に対してはさまざまな呼ばれ方があって、みんなよく知っているのに、女性器については名称を知らない、名まえってあるんだ!と驚いたりして、そこにある非対称性に気づいて「なんでだろ?」と考えて話し合うことも大事なんです、というお話でした。こういうプログラム開発と実践・検証を担当しているという若い女性スタッフが、ほんわかした感じの方で、こういう人がファシリテーターだと子どもたちも安心だろうなぁと思いました。

次は低学年向け。「このかばんの持ち主はだれ?」
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写真の人が答えなのですが、バッグの中にあるモノ(ぬいぐるみになっていましたが、以前は現物が入っていたらしい)から、持ち主を推測する、そうすると「こういうのをもつのは男性だろう/女性だろう」といった思い込みが露になる、その話し合いが目的の活動です。実際に持ち主がわかった後に「なんでこう思い込んじゃうんだろうね?」と、子どもたちの話は尽きないそうです。素敵。f:id:jihyang_tomo:20230819111316j:image

このクマちゃんたちは、ドラマを用いたワークの道具。就学前の子どもたちと一緒に、クマちゃんを使って「いいタッチ/悪いタッチ」の劇を演じ、不適切な接触をされているクマちゃんを「どうすれば助けられるかな?」と助ける方法をやってみたり、自分が嫌なタッチをされる、あるいはしてしまったとき、どうすればいい? も身体を動かしてセリフを考えて言ってみる…いいなぁ。演劇はこういうふうに使ってほしいぞ!と一人盛り上がる元演劇部(笑)劇遊びって、ホントいいと思う…。しかもクマちゃん、カラフルで可愛い。

そしてもう一つツボったのがこの↓「宇宙円卓会議」の部屋

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センターに寄せられた実際の相談から「地球の子どもの相談」をつくり、さまざまな星の代表として席に着いた子どもたちによる「宇宙会議」でそのお悩みを解決しましょう! というロールプレイ。この円卓が可愛い。中央の丸テーブルの上に「好きな人がいるんですけどぉ…」とお悩み相談者のアニメで「さぁ、解決してあげてください!」と議題が示される仕掛けもおもしろくて、これはみんながんばっちゃうだろうなぁと。

そんな教育施設もばっちり持ってらっしゃるわけですが、学校への出張授業なんかもしておられます。ただ、教具や場の仕掛けなども必要なので、「ならばセンターそのものが出張しちゃおう!」とバスをつくったそうで(笑)こんなのが来てくれたら、それだけでテンション上がっちゃいますよね! 貧困地域や、センターに子どもたちが来るには難しい不便なところなどに、ガンガン出かけているそうです。
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おみやげに、ステッカーとか生理についてのリーフレットをもらいました。どれもこれも可愛い。ここでもデザインの力に感心・・・でした。f:id:jihyang_tomo:20230819112252j:image

そうそう、一つ印象的だったことで。

ジェンダーアイデンティティとしては、男女2分ではないとはいえ、やはり社会的に「女子として」「男子として」教育されてしまう側面をふまえると、ジェンダー別の性教育プログラムが必要だと感じていると。特に家父長制的な価値観が強い社会で育つ男子には、さまざまな「男らしさ」の抑圧もあるし、男女の不均衡な力関係と女子に対して抑圧的・威圧的にふるまうことが内面化されている、そのことを踏まえたプログラムが絶対に必要だということで、「男子青少年性教育研究所」を立ち上げたのだそう。

その前段の話で、電話相談などで相談してくるのは男女どちらが多いか? というと、男子の方が多いらしく、その要因というのが「学校がもて余して『ここに聞きに行け』とふってくるから」と聞いて、驚愕・・・と思ったけど、すぐに「ありそうだなぁ」と思ってしまったのでした。性的な逸脱行動とか大人を困惑させる質問とか、そういうのに学校が対応しきれない(知識の問題もあるし多忙さという問題もある)っていうのは十分ありそう…。そして日本はどうなっているんだろうな?と。

セクシュアリティの問題に特化してるわけではない一般的な子ども向け電話相談のバイトを息子ちゃんがやってたことがあって、そのときには相談してくるのは圧倒的に女子で「男はそもそも相談ようせぇへんっていうのが問題なんやと思う」と言っていたことも思い出した。そうすると、持て余されているにせよ、学校の先生には言えているわけで、そして先生がダメならアハがある!わけで、・・・そうでない日本、マズくないか? と考えさせられてしまった。高校に勤めていたとき、DV加害者になっちゃった男子生徒の指導を男性教員がことごとく嫌がって「なんで私が聞かにゃならんのんだ」と怒りながら事情聴取(という名のただただ「ふんふん」と話すだけなんだけど)したのも思い出した。それはもう20年ぐらい前の話だけど、「女を殴るような奴の心理は理解できへんから無理」って、イヤそんなの私も理解できねーよ! 理解できるから指導するわけちゃうやん! と激怒する私に相手は恐縮(?)してたけど、けっきょくはベテランの女性の先生が丁寧に話を聞いて、その男子の家族との関係が相当にしんどいことがわかって(被害者の女子の方もその事情が分かってて同情して我慢していた)、管理職も入って保護者とだいぶやりあった覚えがある(そう思いだしてみると、保護者と対峙するのを担任ひとりに任せて知らん顔した管理職は最低だなと、前日の話も思い出してまた怒りがわく…) 

やっぱり包括的性教育必要です。何をおいても、まず大人からやり始めないと。このままでは子どもがしんどすぎるし、大人もしんどいままだよ…。

そこをポップにがんばっているアハセンターと、それを公費でやってるソウル市、がんばれ!(いま、ソウル市は保守派の首長で、ちょっとドキドキするけど。いまのところ大丈夫そうなので、やっぱり法律つくって仕組みをつくってしまうのは大事だなぁと思うのでした)